つれづれなる風 二の蔵




 

保存データ:2017.3.26〜2017.8.19


これ以降のデータは「つれづれなる風・四の蔵」をご覧ください。


マンション理事会おもしろ体験記E
「マンション理事会懇談会」


 理事長になって半年、すでに理事会も5回開かれた。よたよた、フラフラしながらだが、何とか続けてこられた。管理組合の存在を身近に感じてもらうため、理事会のニュースを出したり、「かわら版」と称する通信を出したりして住民の交流を図ろうと努めてきた。理事長が勝手に突っ走っている、との批判もあるかもしれない。人を使ってやるよりは、自分でやってしまったほうが早いし、思いのままにできる面白さがある。組織とか集団はもともと苦手だった。そんな人間が理事長をやることに、どだい無理があるのかもしれない。

 理事長になった当初から、近くのマンションの管理組合の理事会関係者(主に理事長)を直接訪問し、意見交換をしてきた。何らかのつてを用いたり、直接「ラブレター」を投函したりしたこともある。相手からすれば唐突だったろうが、「雇われ女将」ならぬ「輪番(くじ引き)理事長」としては、共通する話題や悩みやあると踏んでいた。それにこちらはまだ築数年のマンション、教えてもらえることは山ほどあるはず。
 それらはことごとく的中した。こちらばかりでなく、相手方にとっても有益な情報があったに違いない。それに、直接会って話してみると、実にさまざまな人がいる。その経歴も多彩だ。管理組合の話はほったらかしにして、脇道にそれ、迷い込んでしまうこともしばしば。

 自分の住んでいるマンションがある地区には、全部で28か所のマンションがある。当市の他の地区と比べれば、だんとつに多い。「マンション特区」と言ってもいいくらいだ。
 市当局も管理組合に自治会機能を担わせようと、市主催の全市のマンション管理組合理事長会議を開催したりしている。もちろん参加した。他の管理見合いとの出会いの場になるからだ。だが、参加する管理組合は一桁にも満たない。理由は、いちいち説明するまでもなく、「余計なことはやりたくない」だろう。地区の防災会議も参加するが、参加状況は同様だ。先に「住民運動」で紹介した「協議会」も同じである。
 そんなこんなでかかわりを持った管理組合理事会関係(理事長とは限らない)の面々に一堂に会してもらうため、機会を設けた。つい半月ほど前のことだ。当初参加予定だった管理組合が1つだけ急用で不参加になったが、そこを含めると8組合の参加を得た。これまでアタックした組合は14組合だから、打率(?)は5割7分。まっ、いいほうなんじゃないの?
 でも、問題は「打率」ではない。その中身だ。大規模修繕、専門委員会、コンサルタント、マンション管理士、管理会社、高齢化、理事会等について話に花が咲いた。予定していた2時間はあっという間に過ぎてしまった。また今後もこのような機会を持つことにして、初めての「懇談会」は終了した。それぞれの管理組合同士、連絡先を交換し合ったから、これからは直接話し合うこともできるだろう。そうなることを祈って散会した。
 個人的にもこの集まりはひとつの契機になった。以前、当マンションの理事長経験者に呼び掛けて、マンション内で集まりを設けたことがある。同じ理事長経験者として、「同志的な連帯」を感じたが、内容は過去の苦労話多く、前向きの話題には進みにくかった。もちろん、一回限りの話し合いでは仕方かなったという面はあるかもしれない(それはそれとして、今後も進めていかなければならない)。しかし、今回の「懇談会」は現在進行形の話題になったため、明日からでも役立つ情報が得られたように思う。その意味で、この会はもっと広げていきたいし、続けていきたいと考えたが、今後どうなることか。
(2017.8.19)



マンション理事会おもしろ体験記D
トラブル


 マンション住まいだと、戸建てにはないいろいろな事件が起こる。「事件」といっても警察沙汰になるようなものではなく、多くは住民同士のトラブルだ。その一つひとつが、管理人を通して理事長のもとに持ち込まれる。管理人が休みの時などは、直接当事者が訪ねて来ることもある。
 簡単な案件は、なるべく早く対処するようにしている。言ってみれば、長屋の「大家さん」のようなものだ。「大家さん」と違うのは、収入が得られるわけではなく、全くのボランティアだということだ。

 先日もこんなことがあった。居住者の玄関ドアの前に犬のふんが放置されていた。ドアの前ということで、居住者にとっては悪意を疑っても不思議はないケースだ。でも、第三者的に見れば、おそらく飼い主の飼育方法の問題ととらえられる。「善意にとらえれば」ということになるのだろうか。それでも被害者の立場に立ち、できるだけの対応をとる。ポスターで注意喚起をし、ペット飼育者すべて(当マンションでは、登録制でペット飼育可)にペットマナーの徹底を呼び掛ける。
 このケースは、管理人のいない時間にあたっていたので、すべて理事長が対応するしかなかった。今のところ、それ以降のトラブルは聞いていない。

 その翌週、今度はスズメバチ騒ぎだった。1階の植え込みの中にスズメバチの巣があるという通報が寄せられた。この時も管理人不在。通報者は理事の一人。自分で対処してくれてもよさそうなものだが、理事長に言えば何とかなると思ったのだろうか。そうも言ってはいられないから、近隣居住者を訪ね、注意をしてくれるよう口頭で頼み、週明けには市役所に連絡して対処する旨を伝えた。それだけでは心配だったから、ポスターを作り、壁や柱にべたべたと張り付けた。また、厚紙で警告文をつくり、おっかなびっくり巣の近くにもぶら下げた。
 後から聞いた話だが、週明けに管理人が来たときに、殺虫剤でハチを弱らせてから、巣を取り除いたのだという。幸いまだこぶし大の小さなものだったから可能だったらしい。管理人も無事でよかった。

 トラブルが絶えないのは自転車置場だ。2段式で1居住者が2台停められるようになっている。しかし普通の大人用自転車だとぎりぎりの幅しかないから、つい隣と接触してトラブルのもとになる。そのうえ、後ろに荷かごのついたものや、前後に補助いすをつけた自転車が詰め込まれるものだから、たまったものではない。中には電動機付き自転車なんていうのもある。そんな自転車は遠慮してくれればいいのだが、他に正規の駐輪スペースがない(来客用スペース・共用廊下もあるが、そこは本来NGだ)から仕方がない。かくいう理事長だって、つい最近までは折り畳み式自転車を廊下に停めていた。
 カバーが破れただの、ハンドルが壊れただの、時には倒されただのと枚挙にいとまがない。同じマンションに暮らしているのだから、譲り合って、無理をしないで使用してくれれば何とかなりそうだが、顔が見えないからやられた側は我慢がならない。威嚇的な張り紙をしてあるのを見かけたこともある。いっぽう他人のルール違反には厳しい。規則違反の駐輪をなくせだの、廊下の自転車を何とかしろだの、言いたい放題だ。
 まったく、悩みは尽きない。
(2017.8.19)



マンション理事会おもしろ体験記C
住民運動


 うちのマンションの近くにごみ処理施設の建設計画があるという。そのことは以前から聞いてはいた。何年か前に、このマンションにもチラシが入っていた記憶がある。建設反対を訴える内容だったか、関心を持つよう呼びかける内容だったかは覚えてはいない。気になっていたものの、一部の人たちの運動ととらえ、直接かかわることはなかった。マンションの管理組合も取り立てて動いていた様子もない。

 気まぐれで理事長になってしまい、後悔したがもう遅い。何をどうすればいいのか、そのことがわからない(基本的には、管理会社に任せて何もしなくてもいいのだが…)。よそのマンションはどうなのだろうと、管理組合の実情を知りたくなった。そのため、近くのマンションの管理組合理事長とかかわりを持つべく、つてを頼って連絡をとったりしていた(それは今でも続いている)。つてがない場合は、片思いのラブレターのように、よそのマンションの管理人さんに理事長あての手紙を託したりもしていた。
 そんな時、地域で管理組合の理事長が集まる場があるということを耳にした。ごみ処理場に関する地域連絡協議会というのがあって、その場に行けばたくさんの理事長さんやマンション関係者が来るという。これは見逃すことができない。ごみ処理場より理事長目的で、楽しみの晩酌も我慢して、夕方から傍聴に出かけることになった。

 確かに、マンション管理組合や地域自治会の方は参加されている。地域自治会についてはよくわからないところも多いが、管理組合の場合は、ここがマンション街というほどの地区であることを考えると、思ったほどの数ではない。
 衛生組合(当市を含む3市で構成するごみ処理のための組合)の職員や市当局者からの説明と、自治会・管理組合代表者や専任者からの疑問・質問が行きかう。「組成分析」や「ゴミ排出量予測」など、初めてのものにはチンプンカンプンなことが多い。分厚い資料を渡されたが、読む気力すらわかない。
 会議を傍聴して感じたのは以下のようなことである。住民側の不安や疑問に対して、当局者の説明が尽くされているとは言えない状況だということ。協議会が40回以上開催されてはいても、両者の溝は埋まらないままで、建設計画のみが着々と進められていることなどである。そもそもこの会合が、建設内容やごみ処理の仕方について疑問や問題点を指摘・改善する場であって、建設の是非を問うところではないことが膠着状態を生じさせている原因である。

 うちのマンションの管理組合は、市や協議会からの参加要請を断り続けていた。この「体験記」をお読みいただいている方だったら、なぜそうなのかお分かりだろう。…そう、余計なことはやりたくないのだ。そもそも理事会に出るのだって、持ち回りだからしかたなくだ。そのうえ外部の会合に誰がすき好んで出かけて行こう。
 だが、黙っていれば処理施設は着工され、ごみ処理場は稼働し始める。そうなれば通行車両は増えるし、場合によると粉塵・臭気・騒音・振動などが発生しないとも限らない。その対策は充分に講じている、というのが市側の言い分だ(住民側としては、このあたりの不安・不審がぬぐい切れない)。もしその対策が完璧だとしても、なぜこの場所なのかという疑問は残る。
 すぐ南側には老人福祉施設(老人ホーム)がある。東側には企業の社宅が接している。道を挟んで反対側にはマンションが4棟並んで立っている。この施設を含む区画には市の給食センターもある。そんな場所になぜ廃プラ施設(廃棄プラスチックを分別し、梱包・圧縮する施設……その後、別の施設に運び、再源化、一部焼却する)なのか。

 聞けば廃プラ施設が予定されている地区は工業地域だそうだ。なるほどこのあたりは工業地域と住居地域・住居専用地域が入り組んでいる。都市計画図を見るとわかる。それでもここに的を絞ったのは、もともとここに市の(不燃?)ごみ集積場があったからだ。だから他の候補地を検討することもなく、この場所ありきですすめてきた。それが地元住民の反発を招いているともいえる。
 廃プラ施設建設予定地は狭い。市単独の集積場ならまだしも、施設そのものが3市の廃プラを受け入れるため大型化せざるを得ない。そこに無理やり建てようとするから、緑地が確保できない。屋上緑化で緑地法をパスしようとする始末だ。
 それにしてもだ、時代は移り、地域環境はがらりと変わった。昔は大きな工場や中小の工場もあった。それも現在ではほとんどなく、工場の撤退はほぼ完成している。4棟のマンションすぐ北側には大型商業施設が接しており、その施設のさらに北の向かい側にも、道を挟んで同じような施設がある。つまり、この地域は実質的に商業・住宅地区なのだ。土日は買い物客の車で主要道路は渋滞が発生する。平日だって交通量は多い。「こんなところに!」というのが住民の偽らざる感想だ。
 「こんなところに!」といえば、廃プラ施設のすぐ北側には大型遊戯施設(パチンコ屋)が立っている。これも数年前にできた施設だ。実質住宅地であるところに、まさかのパチンコ屋の出現だった。さすがに騒音に対する対策は万全なようで、すぐ外を歩いていてもほとんど騒音は聞こえてこない。チンジャラジャラは言うまでもなく「軍艦マーチ」(今時、こんな曲をパチンコ屋で聞くことはないが、)すら聞こえてこない。しかし、交通量は確実に増えているし、荒んだお客の(運転を含む)反応は地元にとって脅威でもある。こうなると、市の都市計画そのものが破たんしているとしか思えない。
 パチンコ屋ができる時にも反対運動があったと聞くが、一部の人たちの反対で終わってしまったようだ。でも、誰が見ても「こんなところに!」と思うだろう。

 理事長になって協議会を3回傍聴した。様子を見に行き理事会に伝え、理事会として正式に参加することを提案するためだ。そして提案が通り、4回目からは正式参加することになった。
 うちのマンションでも、小さなお子さんをかかえていたり、小学生がいるご家庭では、何となく不安に思っている人はいる。それがマンション管理組合理事会としては吸い上げられてこない。協議会への不参加は賛成ではないまでも、反対ではないととらえられてしまう。
 市当局としては、各マンションの管理組合を自治会として扱っているため、管理組合に話を持っていく。だが、前述のような事情で断られる。それをいいことに、承諾を得たというアリバイ作りに使っている。協議会の中でも、市側からそのような意味の発言があった。
 別な言い方をすれば、ここがマンション地区だから大きな反対も起こりにくく、計画通り進めやすいのだ。しかし、マンションは占有面積こそ狭いものの、居住戸数をならせば、このあたりは住宅密集地ともいえる。市や衛生組合が誠実に取り組もうとするなら、管理組合ではなく、個々の居住者にあたらなければダメだ。
 いっぽう、管理組合ももっと地域の問題に目を向け、足を運ばなければならない。そうすることは、ひいては自分たちの生活に自覚的になり、管理組合の活性化につながっていくはずだからだ。
(2017.7.22)



日本は法治国家とは言えない

 昨日、「7・11共謀罪施行抗議!国会前行動、共謀罪廃止!集会」に参加した後、市民団体「森友・告発プロジェクト」による安倍晋三首相を公選法違反で東京地検に告発する行動に同行した。
 安倍晋三首相が小金井市内と秋葉原駅頭で行った東京都議会議員選挙で、「内閣総理大臣安倍晋三」して自民党候補者の応援演説を行ったというものである(告発状参照)。

 内閣総理大臣という行政職の長にあるものが、特定の政党の候補者の応援をすることは地位の利用以外のなにものでもない。地位・立場をわきまえない(あえて無視して利用する)のは、内閣理大臣としての靖国神社参拝(憲法20条違反)とまったく同じ構図だ。それを警察・検察・裁判所が捜査・逮捕・起訴・断罪しないのもほとんどいっしょだ。
 稲田朋美防衛相が都議選の自民党候補の集会(板橋区)で、「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と応援演説をしたことは、「失言」というような軽微なことではなく、「撤回」すれば済むことでは断じてない。公職選挙法・国家公務員法・自衛隊法に違反する重大な問題で、なぜ警察・検察が動かないのか不可解でもある。
 同じことを一般の国家公務員が行えば、公職選挙法ばかりでなく国家公務員法違反で逮捕・起訴されるだろう。地方公務員や公立学校の教員は地方公務員法・教育公務員特例法で政治的行為が(それが妥当か否かは別として)禁止されているからだ。
 その親玉である安倍晋三首相を検察に告発した市民団体の活動は敬意に値するが、そもそも市民団体が告発しなければ検察が動かないこと自体が異常なのだ。ただ、下手をすると告発しても「不受理」などということにもなりかねない。もしそうなれば、警察・検察(・裁判所)も彼ら(「あんな人たち」)の仲間なのだということになる。
 森友・加計問題の結論を待つまでもなく、「この国は法治国家ではない」「この国の政府は完全に私物化されている」と「こんな人たち」は思うだろう。国家は「あんな人たち」のためにあり、取り締まりは「こんな人たち」のみを対象として行われているからだ。
(2017.7.12)

おまけ
あまりに素敵な動画が送られてきたので、ひとりで見るのはもったいないと思い、紹介することにしました。
「反安倍」の動きは、ひとつの文化にまでなっています。
ABE IS OVER」歌:趙博(チョウパギ)



マンション理事会おもしろ体験記B
相見積もり


 6月安倍政権の国政私物化がすすもうと、共謀罪が前代未聞のいかさま手法で成立させられようと、マンション生活・マンション管理組合活動はたんたんと続けられていく。朝、東から太陽が昇り、夕方、西に沈むように。そりゃそうだろう、時の政権のご意向を「忖度」していた日には生活は成り立たない。クーデターが勃発しようと、革命が起きようと、毎日の生活は続く。ただそれだけの話だ。

 先日、駐車場の外灯が切れた。予備のランプはあるが、蛍光灯の取り付け箇所は地上から4メートル近くある。人の背丈の2倍ほど、はしご段をかけて登らないと届かない。素人作業でやってできないことはないが、鉄柱は直径20センチほどだから、下手をするとはしごがくるりと側面を回転し、作業員が落下する危険性もある。当然、安定した脚立・または高所作業車が必要となる。
 出入りの電気系統の整備会社に頼んだところ、1基16,000円(1,600円じゃあありません)するという。よくよく調べてみると6基も切れていたとのこと。電気の球変えるだけで96,000円かよ、と思ったが、管理人さんが気を利かせて交渉してくれた結果、6基全てで16,000円に収まった。交渉してくれたこと自体はありがたいが、工事費用なんて相当にいい加減なものだということがわかる。さらには、管理会社配下の電気屋さんなので高いのだろうと、地元の業者に当たってみることにした。

 地元の業者といえば、まず思い浮かぶのが「街の電気屋さん」(確か、こんな名前の店があったような気もする)。蛍光灯やクーラーなんかを扱っている、昔からあるお店だ。たしか、マンションの近で見かけた記憶があったので、散歩がてらに行ってみることにした。
 このご時世、こんな小さな電気屋さんはさぞ経営が厳しいだろう、近くのマンションから注文が飛び込めばきっと大喜びだろうと、少しばかり恩着せがましい気分で店内に入る。ざっと事情を説明し、「お宅でやってくれたら、おいくらですか」と聞く。いくら何でも16,000円という線はないだろうと高をくくって。
 ところが、うちではそれは難しいという返事。こんな小さな店では高所作業車もないし、はしごをかけての仕事だと危険なのだそうだ。出だしから気勢をそがれた。こちらの、仕事を与えてやろう的な姿勢も感じとられたのかもしれない。何事にも上から見下ろすような態度はよろしくない。
 しかたがないから、電話帳をめくってやってくれそうな会社を探す。だが、「○○電気」「○○設備」という名前だけでは、その規模や顧客対象がわからない。まして高所作業車を持っているか否かなどは不明だ。とりあえず電話して、その辺のことも含めてやってもらえるかどうか聞いてみる。
 数軒の店に電話していて、ふと気が付いた。切れた電球は出入りの業者が交換してくれたので、今は全て正常に点灯している。すぐに注文ということではない。今は、やってくれたらいくらになるかという見積もりを出してもらうだけ。電球が切れたとき、見積もり額によっては発注することになる、と付け加えることにした。
 ぼくは、民間の会社に、しかも常勤で務めたことはない。だから知らなかったのだが、業者というのは、実に熱心なものだ。それだけの前提条件でも、現地までやってきて高さを測り、カバーを外すなどして実物を確認し、後日見積もりを届けてくれることになった。見積もりは直接理事長(つまり私)に届けるよう依頼した。このあたりは、新米理事長も抜かりはない。後日他社からの見積をとるとき、管理会社経由で配下の電気屋さんにその見積もり額が漏れたら、公平な競争にならないからだ。
 後日、見積額が届いた。なんと出入り業者の半額。台数が増えれば割安になるとのこと。交渉して16,000円にまけさせたのとえらい違いだ。これに気を良くして、地元の業者をもう1社あたることにした。そちらの業者からも見積もりが届く。さらに安い金額が提示されていた。おまけに、LED化の提案までついている。さすがにこちらはかなりの金額だ。
 後日の理事会で、管理会社からも数社見積もりを取ってもらった。なかの1社は4万円台の金額を提示してきた。これには理事一同ひっくり返ってしまった。

 実は以前、エレベーターのメンテナンス会社に行って保守・点検の年間契約の感触を探ったことがある。独立系(エレベーターメーカー系に対して、保守・点検だけを請け負う業者をこう呼ぶ)だったが、なんと「現在の半額でできますよ」とのことだった(うちのマンションは当然メーカー系)。サービス内容もほぼ同等にできるという。もしそれが事実ならば、毎年100万円以上の額が浮くことになる。
 マンションを購入時から今日まで、管理会社の選定した業者(しかも、管理会社系のものが多い)がほぼそのまま関り続けている。管理組合がアクションを起こさない限り、そこには競争原理など働きようもない。居住者は、マンションの部屋を簡単に買い替えることなどできないが、選定業者はいくらでも買い替える(入れ替える)ことができるのだ。さらに言えば、管理会社そのものだって例外ではない。そのための選定基準のひとつが相見積もりだ。
 要は、マンションを自分たちの共有している家として自覚的に関われるかということになる。具体的には、マンション管理組合を自立した組織として主体的に運営できるかということに尽きる。
 マンション管理会社にすべてを委ね、割高な管理費を払って快適な(?)マンションライフを過ごすのもひとつの考え方だろう。そのような人たちはマンション管理にはほとんど関心を示さない。管理会社にとっては都合のよい顧客だ。しかもそのような人たちが大多数であることも事実だ(なにやら、どこかの国の政権と国民の関係に似てはいないか)。
 何を隠そう、かつては自分もそのような多数派の一翼を担っていた。しかし、輪番でまわってきた理事になり、理事会に関わるようになってから、本当にこのままでいいのだろうかと考えるようになった。理事の再任を自ら希望し、あまつさえ理事長に名乗りを上げ、立場は一転した。やってみると課題はたくさんある。面倒なことも多いが、面白みもある。無関心層が多いのは事実だが、なかには呼びかけに応えてくれる人たちもいる。もちろんほんの少数だ。だが、いつだって変革は少数者から始まる。それを信じて、新米理事長は今日もゆく。
(2017.6.26)



あきらめない、おそれない

 6月15日(木)共謀罪が参議院本会議で強行採決されてしまった。しかも、参議院の法務委員会審議を途中で打ち切って直接本会議にかける「中間報告」という、きわめて異例・異常な形での採決だった。手続き的にも国会審議を否定するにも等しい暴挙である。

 犯罪事実の結果が発生していない、実行行為もない、準備行為さえない段階での、いわゆる「共謀」しただけで集団全員が罪に問われるなどということが、そもそもおかしい。日本の刑事法体系は罪刑法定主義を原則としている。すなわち、何をやったら処罰されるかが法律によって明確に規定されている。これが権力による恣意的な運用を防ぎ、基本的な人権を守るという歯止めになっている。たとえ犯罪行為を考えたとしても、それだけで処罰されることはない。内心の自由が保障されているというのはそういうことだ。その自由が共謀罪の成立で危うくなる。

 テロの未然防止という新設理由だってまったくの虚偽だ。国連越境組織犯罪防止条約を批准するために必要と政府は言っているが、この条約は、経済的な利益を目的としたマフィア対策のためのもので、テロとはいっさい関係ない。そもそも日本はこれまでに13のテロ対策条約に加入し、関連する国内法の整備を行っている。
 共謀罪(テロ等準備罪)にだって、当初は「テロ」という文言はなく、批判を受けて、慌てて「テロリズムその他の」という文字を付け加えたという経過もある。対象犯罪と想定される277の犯罪名の中に「テロ等準備罪」という犯罪名はないのだ。

 犯罪が成立していないのに罰するためには、対象団体の日常的な監視・情報収集・内通などが行われることになるだろう。すでに公安系査察を中心に、市民活動等にまで監視は常態化している。共謀罪成立により、委縮効果はいっそうたかまる恐れがある。電話・メールの盗聴も行われ、プライバシーの侵害は際限なく侵されるだろう。密告も奨励され、猜疑に満ちた世界になれば、人間関係の破壊、社会的に大きな損失だ。

 こんな法案が成立させられてしまったことに強い憤りと、深い絶望を感じる。しかし、絶望はいっとき、憤りは持続させ、また「異議あり」の声を挙げよう。警戒しつつも、抗議を続けなければ負けたことになってしまう。あきらめさせ、おそれさせることこそが権力を持つ者のねらいなのだから。
(2017.6.19)



民進党 福山哲郎氏へのメール

福山哲郎さま

おはようございます
以前、戦争法案の強行採決のおり、参議院本会議での貴殿の演説に感動し、メールを差し上げたものです。
もうお忘れかもしれません。
もしかしたら、貴殿ご自身にまで届いていないのかもしれません。

戦争法案の時局がデジャブのようによみがえってくる今日このごろです。
衆議院法務委員会、そして本会議、参議院法務委員会になり、次は参議院本会議で共謀罪法案強行採決でしょうか。
とても見過ごしにはできません。
このままでは戦争法案の二の舞です。

あの時と少し違うのは、森友疑惑・加計学園疑惑が国民の間に広がっていることです。
とりわけ加計学園に関する前川喜平・前文科事務次官の証人喚問は重大です。
それを拒否する自民党・公明党の対応、文科省内の「内部調査」のでたらめさ、都合の悪い文章は早急に破棄してしまい、デジタル情報としての再生も試みない。
再調査もしない。
これは文科省に限らず、財務省ほかの省庁も同様です。
国民の怒りは沸点に達している。
自民党や公明党が前川氏の証人喚問を拒否するのであれば、国会の審議を止めてでも抗議の意思表示をすべきです。
国民は必ず支持します。

共謀罪法案提出を対置させることによって、森友疑惑からの逃げ切りを図ろうとした自民党の戦略は実に巧妙です。
であるならば、それを逆手にとって森友・加計疑惑を徹底追及することで、共謀罪法案を廃案に追い込むことも選択肢としてあり得るでしょう。
成功の可否は、一に国民世論の動向によります。
野党が、審議拒否をかけて徹底追及の姿勢を見せれば、必ず市民はついていきます。
今が共謀罪を廃案に追い込む最後のチャンスかもしれないのです。

野党第一党である民進党が腹をくくって最後の賭けに出なければ、他のどの野党が代わりになれるでしょう。
他の野党も必ずついてきます。
国民世論を信じ、他の野党を信じることから闘いは始まるのではないでしょうか。
国会で闘うのは国会議員の職務ですが、審議拒否も立派な闘いです。
国民はそれを見ています。

戦争法案の二の舞は絶対に避けましょう。
国会議員は、今こそ議事堂から外に出て、森友・加計疑惑追及、共謀罪反対を訴えましょう。
市民・労働者と手をつないで、デモをしましょう!

(2017.6.8)



共謀罪(テロ等準備罪)に断固反対する
―共謀罪の狙いはテロ対策ではない―


 とんでもない法律がつくられようとしている。テロ対策に名を借りた、現代版の治安維持法だ。日弁連・法学者、出版・言論関係者もこぞって反対している(日弁連等の反対表明は以下のサイト)。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/complicity.html
http://www.kt.rim.or.jp/~k-taka/kyobozai.html
http://syuppan.net/wordpress/wp-content/uploads/2017/04/d25da9af8426604646dccc7ea6221045.pdf
http://www.japanpen.or.jp/statement/post_585.html

 そもそも、罪となるような行為を犯してもいないのに人を逮捕・拘束するなどということがあっていいはずがない。考えただけ、口に出しただけ、同意しただけで処罰するなどが現実化したら暗黒世界だ。思想良心の自由、集会結社・表現の自由に反する。上記団体が反対声明を出すのは当然だ。憲法違反も甚だしい。

 犯罪を実行する前から容疑者として捜査する。それは事前の諜報活動だ。二人以上の団体に対する監視が常態化する。場合によっては、対象団体に対してスパイ行為すら行われよう。
 現在だって盗聴や監視は行われている。公安警察ばかりでなく、刑事警察だって合法・非合法を問わずやっている。1986年の共産党に対する盗聴事件などは氷山の一角だ。
 ソ連が崩壊して暇になったのかどうか知らないが、反政府的な集会やデモには常に公安警察が付きまとい、カメラやビデオで映像記録を収集している。これだって肖像権の侵害という立派な犯罪行為だ。デモ行進などでの機動隊による必要以上の強圧的な規制と相まって、集会や示威行為から足を遠ざけさせる結果となる。これが集会結社、表現の自由の抑圧でなくてなんだ。
 テロ等準備罪という共謀罪は、これらの違法行為を合法化させる。監視社会・警察国家の誕生ともなりかねないきわめて危険な法律だ。市民活動だけでなく、報道・出版を含むすべての表現活動を委縮させることになる。

 安倍政権は2013年に特定秘密保護法、2015年戦争法(「安保関連法制」)をいずれも強行採決した。昨年の刑事訴訟法の改正(改悪)によって、すでに司法取引・刑事免責・盗聴の拡大が行われ、共謀罪法案の地ならしがなされた。そして今回の共謀罪の新設だ。どれも批判勢力・反対勢力をつぶし、戦争遂行を容易にすることを狙っている。
 テロ対策などという衣をまとってはいるが、その下から治安維持法という鎧が透けて見える。戦争を阻止するためにも、共謀罪法案は絶対に廃案にしなければならない。
(2017.5.10)



憲法違反がまかり通る

 秘密保護法制定、集団的自衛権容認、そして共謀罪提案など安倍政権の戦争策動は止まらない。4月24日にはトランプアメリカ大統領と電話会談し、「北朝鮮情勢について突っ込んだ意見交換を行いました。私からは全ての選択肢がテーブルの上にあることを言葉と行動で示すトランプ大統領の姿勢を高く評価しました。」と戦争開始を辞さない姿勢をあらわにした。
 トランプ大統領はすでに武力攻撃も選択肢に入れる姿勢を明らかにしている。その姿勢を「高く評価」する安倍首相の判断は、これまで以上に日本国憲法に違反していることになる。
 今さらここで示す必要もないが、日本国憲法は第九条一項で「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定している。安倍首相の声明は明らかに「武力による威嚇」にあたるのではないか。安倍首相の声明は誰が見ても憲法違反として断罪されなければならない。
 憲法前文では「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と述べられている。そのために「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思」ったのではかなかったか。

 海上自衛隊はすでにアメリカ海軍カールビンソンと共同訓練を行っている。さらに本日(4月30日)、稲田朋美防衛相が、米軍の艦船などを守る「武器等防護」を実施するよう自衛隊に命じた。朝鮮民主主義人民共和国との戦闘に突入することになれば、日本が戦争当事国となる事は火を見るより明らかだ。第二次朝鮮戦争に陥らないよう、我が国は徹底的な外交的交渉を通して事態の解決を図るのが筋であろう。
 しかし、それに反して安倍政権は、朝鮮民主主義人民共和国の脅威をあおり、我が国を戦争に駆り立てようとしているように見える。戦争回避を図るより、危機を煽ることに専念している。そのためには何でもありだ。内閣官房国民保護ポータルサイトでは、Jアラートを使った弾道ミサイル防護訓練をアップし、国防意識を駆り立てている。
http://www.kokuminhogo.go.jp/shiryou/nkjalert.html
 また、作日(4月29日)には地下鉄(東京メトロ)等を含む各鉄道会社が弾道ミサイル発射を受け、その時間帯、車両を臨時停車させる措置を行った。

 唯一の被爆国として、第二次世界大戦で災禍を受けた国民として、中国・朝鮮をはじめアジアの人々を虐げた歴史的事実を持つ国民として、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚」(憲法前文)したはずである。そのような自覚に立てば、戦争を煽るようなことは、厳に慎まなければならない。まして共謀罪などによって、戦争中のような言論弾圧や、思想表現の自由を脅かすようなことをすることは許されない。そのような意味で、私は安倍政権には断固反対する。
(2017.4.30)



マンション理事会おもしろ体験記A
「お花見会」


 前回の体験記@で、マンション住まいについて、「地域のしがらみや、付き合いから遮断された生活。隣の住民とすら没交渉でいられる。自分も含めて、大方の入居者はそんなところを『長所』として選んだのだろう。」と書いた。おそらく大きな間違いではないと思うが、どうやらそればかりではなさそうだという体験をした。

 もともと仲間内で食べ飲みすることは嫌いではない。人を集めてイベントを開くこともそんなに苦ではない。昨年秋からこの春まででも、毎年恒例となっている10月の「芋煮会」、年末はマンション理事有志での「忘年会」、2月には同じくマンション理事有志での「お疲れさん会」、3月は(6年以上前の)ヘルパー講習会参加者の同窓会、4月は(17年以上前の)職場の仲間の花見等々、呼びかけて実施した。花見は天候に恵まれず、そもそもほとんど開花しておらず、ファミレス室内での会食となった。桜の開花は例年並みだったが、その後なかなか暖かくならず、花の見ごろは遅れた。
 昨年も近くの公園で、マンションの理事有志の花見を実施した。その時は正体をなくしてしまい、帰りは参加者の車でマンションまで送ってもらうという醜態を演じてしまった。心臓が弱くなっているから、少しのアルコールでも酔いが回ってしまうのだ、というのは言い訳で、節度を持って酒をたしなめばいいだけの話だ。

 このマンションでも催し物はある。「マンション打ち水大作戦」や「クリスマス飾りつけ」など。管理組合主催とはなっているが、実質的には管理会社主導で行われている。もともとの言い出しっぺは管理組合でなく、管理会社からの提案を受けての実施だ。管理会社にとっては、ニュアル化された年間計画の一環なのだろう。それでも、小さなお子さんを抱えた家族が参加してそれなりに盛り上がってはいるようだ。
 理事長になったのをきっかけに、今年は管理組合主催で、全居住者に呼びかけて花見をやろうと思いついた。とはいえ、場所取りまでするのは難儀だ。都合のつく数人の理事がスタッフとしてかかわってくれるだけだから、酒や肴までは用意はできない。そもそも、帰りに酒気帯び運転でもされたら責任問題になるから、主催者としてはアルコールを用意しない。用意するのは、参加者1人につき、おにぎり2つとお茶かジュース。それ以外は各自持ち寄り。事前に申し込みのあった家族におにぎりとお茶を配って、あとは好きなところで、各自の都合のいい時間まで、自由に花見に興じてもらいたい、そんなノリで計画した。管理組合主催としては、実にショボい花見会だ。

 参加申し込み締め切り日が迫ったころ、マンションの管理人さんから呼び止められた。そして、「おにぎり配って『あとはご自由に』ではまずいですよ。小さなお子さん連れのファミリーもいるけれど、ご夫婦や単身で参加される高齢の方もけっこういらっしゃる。そういう方は、交流を求めておられる。場所だけは確保して、交流できる場としたほうがいいです。必要ならば防災用のシートを2枚ほど出しますから。」と言われた。
 うーん、めんどくさいなあ。場所取りったって、誰がやるの。上野公園ではないからそんなに込み合うことはないだろうけど、シート2枚を敷きつめるとなれば、ほかの花見客よりは早めに現地に行っていなければならない。公園管理事務所にも挨拶をしておく必要もある。おにぎりなどは、コンビニの店員が現地まで運んでくれることになっているからいいけれど、雨の場合の対応などを考えると、限りあるスタッフで切り盛りできるのだろうか。しかし、おにぎりもらって「ハイさよなら」では、ひとりで参加した方にとって立つ瀬がないだろうことは確かだ。

 これはマンションに限らないけれど、管理人さんの位置はきわめて重い。最初に書いたように、お隣さんとの付き合いもほとんどないマンションでは、管理人さんが住人のネットワークの中心にいる。住民の名前・仕事・家族構成・生活パターンなどの個人的な情報を日常的につかんでいるのは管理人さんだ。毎日管理人室から挨拶するだけだとしても、人間関係の結節点にいるといっていい。その管理人さんの感じられたことは無視できない。
 しかたない、場所取りをするか。宴会の中心で采配を振るうのは苦手だけれど、まあやるしかないか。覚悟を決め、4m×5mのシートを2枚借りることにした。あとは当日の天気次第だ。雨になった場合は、参加申し込みした人に、マンションの玄関でおにぎりを配る予定になっていた。むしろ雨天中止のほうが楽だなあと思わないではなかった。

 当日の天気はうす曇り。残念ながら(?)雨ではない。気温が低い日が続いたせいか、桜の満開から1週間以上たったのにも関わらず、花は3、4分咲きだ。
 お花見開始時間の3時間前に公園に行って、適当なところで場所取り。さすがにこの時間だとほとんど花見客はいない。それでも2、3か所はシートが広げられている。しかし、こちらのシートほど広いのは、他には見当たらない。
 もう一人の理事さんが付き合ってくれて、二人でシートを敷く。ときどき弱い風が吹く。シートがめくれて飛ばされそうになるので、持ってきた飲み物などを四隅において固定する。場所の目印となるように、(ほとんど使わなくなった)山用のストックを地面に突き刺し、ラミネート加工したマンション名を張り付ける。これでけっこうお花見会の会場らしくなった。
 手伝ってくれた理事さんと1時間ぐらい現地でお話をしていたが、用事があるとのことでいったんマンションに戻られることになった。あとはひとりで留守番だ。
 ときどき吹く弱い風も、じっとしていると身に応える。うす曇りで、日差しもほとんどない。体を温めるため、ストレッチなどしてみる。それにしたってそう長くはやっていられない。ふと気付くと、先日の宴会で残った焼酎があるではないか。ぼくは焼酎をほとんど飲まないのだが、背に腹は代えられない。……といって、飲んでしまえば後の責任は負えなくなるのは目に見えている。ここはぐっと我慢のしどころだ。
 それから1時間半余り、他の理事さんが、やっと一人二人と現れ始めた。参加者も三々五々集まってくる。その頃になってやっと弱いながらも日が差すようになってきた。まるで留守番いじめだ。
 参加者総勢58人名、22家族。思いのほかたくさんの人たちが参加してくれた。はじめは遠慮してシート脇にファミリーシート敷いていた人たちも、いつの間にかブルーシートに移ってくれた。管理人さんが忠告してくれたように、みんなが集える場を作らなかったら、さびしい思いをして帰ってしまわれた方もいただろう。全体の場で自己紹介して盛り上げたわけではないけれど、皆で乾杯したあとは、それぞれのグループで、時には混成になって、楽しそうに語り合っていたようだ。
 迷いつつ、手探りで始めたお花見会だったけれど、やってよかったとは思えた。来年、管理組合として取り組むかどうかはわからないが、もしやらなかったら実行委員会を組織してでも実施したいとさえ思った。
(2017.4.2)



マンション理事会おもしろ体験記@
「理事長になりました」


 マンション住まいは初めてだった。賃貸の団地には何回か住んだこともあるし、アパート住まいは数知れない。だが、分譲マンションには今まで住んだことはない。
 だいいち、「マンション」という響きがあまり好きではない。なんだか、お金持ちの取り澄ました住まいという感じだ。ただ、その密閉性・プライバシーの確保は何となくあこがれるものがある。つまり気楽だということだ。地域のしがらみや、付き合いから遮断された生活。隣の住民とすら没交渉でいられる。
 自分も含めて、大方の入居者はそんなところを「長所」として選んだのだろう。ただひとつ面倒なことがある。入居が決まった段階で、すべての居住者(「区分所有者」と呼ぶ)は強制的にマンション管理組合の組合員にさせられる(※1)。その管理組合の理事という仕事が定期的に回ってくる。賃貸ならばありえない、半ば義務化された「お付き合い」だ。
 はじめは立候補という形をとるが、例外を除いて立候補する人はほとんどいない。誰もがやりたがらないから、理事はほとんどが輪番制か抽選で決まる。理事の中から理事長を決める場合も同様だ。責任も関りも一段と高い理事長に立候補するひとはまずいない。当然抽選となる。

 ぼくの住むマンションは築6年を経た。当マンションもはじめは抽選で理事を決めていたが、(これは推測だが)どうせ全員がやらなければならない仕事だからという理由で、途中から輪番制にした。まあ、合理的な判断ではある。
 順番で行くと、ぼくが理事に就任するのは来年度(2017年4月 ※2)のはずだった。しかし、隣の居住者が一昨年の末に一戸建てを買って引っ越してしまったため、1年前倒しで、今年度理事になった。くじ運よく、理事長職は当たらなかった。次に皆から避けられるのが、防災担当理事だ。なぜかと言えば、2日間の防火・防災管理者講習に出なければならない(資格を持っていれば不要)からだ。
 勤め人が多く、立候補する理事はいない。時間は売るほどある自分がやるしかないかと、あきらめ気味で防災担当に手を挙げた。少し心配なのはトイレのこと。利尿剤を飲んでいるから、行くタイミングを誤ると大変なことになる(このことを書くだけでも、落語のネタになりそうな面白話ができる)。後日談だが、それもなんとか無事にクリアできた。

 まあ、そんなこんなで理事の仕事の分担も終わり、第6期の理事会は走り出した。第一回目は前期理事からの引き継ぎ、2回目からはマンション管理会社(具体的には管理人さん)から招集がかかり、集会室に行く。はじめのうちは何をどうすればいいのか、皆目わからない。
 管理会社の担当者(これを「フロント」という。何やら左翼セクトのように聞こえる……。)が司会進行を勤める(この仕事が「理事会運営の支援」というになる。「支援」などと聞くと、労働運動用語のように聞こえるのは世代的な特質か)。管理会社の月次報告と提案、それを何となくうなずきながら聞く。余計なことを言って延ばしても悪いから、多少の疑問には目をつぶる。周りの理事も似たり寄ったりだ。
 管理会社の月次報告などはきちんと帳尻が合っているから、とりたてて問題にするようなことはない。提案も通常は危なげないもの(生協による産直販売など)が多いが、中には利益誘導ではないかと思われるようなもの(ネット環境の改変に伴う新機器の導入・建物点検に伴う補修提案・電力自由化に伴う新契約など)もある。マンション管理会社の関連会社に契約を依頼するようなものが多い。そのつど適宜判断して諾否を決めるが、専門的分野に関しては理事では判断しようがなく、その結果、管理会社の提案どおりということも少なくない。
 半年もこんなことをやっていれば、誰でもこのままでいいとは思わなくなるのではないか。少なくとも、自分はそうだった。問題点はどこにあるのか。自分なりに行きついた結論はこうだった。はじめに、理事会の自立性と継続性が保障されていないことが大きな問題だ。そのうえで2番目の問題としては、専門的な知識がないことだ。
 はじめの問題を解決するには、理事会の体制を根本的に変えないとどうしようもない。現状では、理事の人数は10名、任期は1年だ。つまり、1年交替で理事が全員入れ替わってしまうことになる。管理会社としては毎年新任の理事を相手にするわけで、自らの意向が通りやすいことになる。理事会としての経験の積み重ね、知識の蓄積など望むべくもない。
 2番目の問題としては、理事自らが学ぶか、専門的な知識を持った人にサポートしてもらうしかない。「自ら学ぶ」と言うのは簡単だが、時間も人数も限られた中では難しいだろう。まして理事のほとんどは勤め人だ。となれば、専門家のサポートを仰ぐしかない。ただでそんなことをやってくれる人はいないから、それなりの組織に依頼するしかない。当然有料だ。

 これらのことを一挙に解決することはできないから、まず理事の任期について取り組んだ。しかし、1年でも苦痛と感じる人たちに、倍の2年任期の提案がすんなりと通るはずもない。理事会でも同様だった。反対こそなかったが、総会に提案するだけの積極的な意向は得られなかった。そこで、先ず理事経験者にアンケートをとり、その後に居住者全員にアンケートするという「丁寧な」手続きをとることになった。
 結果としては、アンケート提出者に対してどちらも賛成が多数だった。ただし、理事経験者の賛成が提出者の半数だったのに比べ、居住者は半数に満たなかった。自由意見の中には「理事任期2年は長い」とう方も多く、賛成意見の中にすら少なくない数見られた。
 理事任期の変更は管理組合規約を改定しなければならない。通常決議なら出席者の2分の1の賛成で議決できるが、規約の改正は特別決議になり、全有権者の4分の3の賛成を得なければならない。上記の実態で4分の3の賛成を得ることは、とうてい困難である。3月の定期総会に上程することは、残念ながらあきらめざるを得なかった。かといって、このままほっておけば、理事の任期については泡沫(うたかた)の夢に終わるだろう。新期理事は何事もなかったかのよう理事会に参加し、前年度のぼくたちのように、管理会社の台(うてな)の中で転がされていくだけだろう。
 どうしよう……と悩んだ末、理事職を再度務めることにした。幸い、管理規約には理事の「再任を妨げない」という条項がある。これを活用すれば、来年度も理事をやることは可能だと勢い込んだものの、あやうく墓穴を掘りそうになった。
 今期最後の理事会は、新理事候補が決まることもあり、いつもより30分早く開催された。事前にその連絡は受けていたが、肝心の当日、いつもの開催時間だと勘違いしてしまった。参上した時にはすでに新理事が決まり、役職まで割り振られていた。絶望的な気分を奮い立たせ、再任を申し出る。再任申し出の期限が定められていないこと、理事の輪番と再任との優先順位が規約のどこにも書かれていないことなどをまくしたて、横紙破りで理事に就くことができた。あおりを食らって新理事がひとり降りる羽目になったが、幸い自主的に辞退の申し出があり、事なきを得た。さらに、やりたいことを実現するためには、理事長のほうが絶対的に有利と考え、無謀にも理事長職を買って出た。すでに理事長は決定されていたが、くじ引きで決まった理事長であり、その方は当日欠席していたこともあって、誰も文句を言わず、あっけないほど簡単に理事長に就くことができた。すべては(かつての自分の受け止め方とも同じ)「できれば避けたい理事」「やりたくない筆頭の理事長」のおかげだ。
 波乱万丈の成り行きで、めでたく(?)就任できた管理組合理事長職。冷や汗とお笑いの第一回目報告でした。今後も折に触れてご報告します。さらなる展開をご期待ください。

※番外編の「管理士事務所訪問」(2017.3.5)は、上述のような成り行きの中で経験したことである。
※1 「区分所有法」という法律で定められている。
※2 正確には3月末に開かれる管理組合定期総会終了後から、翌年の定期総会までが任期だが、ここでは便宜上、年度区切りと表現した。
(2017.3.26)

これ以前のデータは「つれづれなる風・二の蔵」に保存してあります。






































































































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